危険中毒

そこからの動きは、
自分で驚くほど、
迅速だった。

クローゼットを開ける。

生活感の無い部屋なのに、
黒ずくめの衣装だけは、
充実している。

革のショート丈のジャケットを
失敬し、私の手は、
自分の意志をもたず、
無意識に、服の奥に隠された
戸板を外して、そこから
武器を調達している。



私・・・

何で・・？

こんな事が出来るの？



今は、自分の内側からの
問いに応える時間はない。


ナイフとガンを胸元にしこんで
同じく調達済の革紐で、
ヒールを、捻挫しない程度に、
足首に固定した。


少し開けた扉から、
廊下の様子を伺う。


ここは、地下？

この建物は、窓もないが
何より土の匂いを感じる。

セキュリティを確認し、
扉からすり抜け、
壁に背中をつけた。


フロアリングの床

侵入者対策か？

音をたてないように、
爪先立って、階段の方向へ
すすむ。


袋小路からの出発だから、
先刻、ムーンに連行された
通路のどこかに、
外部への扉があるはずだ。