危険中毒
あと数メートルで、
階段にさしかかる。

うっすら光が漏れているのは、
何かの部屋があるからだろう。


ここは、一気に
駆け抜ける事にした。

と、

そう判断した瞬間

駆け出す自分がいる。


私は一体ダレ?

私は何モノ?


本当に、『リディア』?


思考の奥側、
霧の向こうの意識だろうか?
何かがうごめいている。


「!」

体の左側に、突如、
風圧を感じる。

瞬時に身体を翻し、
そちらに銃口を
向けようとした。

「痛ッ!」

覆われた口から、
悲鳴がもれる。

感じた風圧は、
扉が開いたからだろう。

一瞬にして、
中へ引き込まれ、
口を塞がれた。

ガーゼが、キズを守っていると
いえども、手指が、
真新しいそれを圧迫して、
気絶しそうになる。


「もう、脱走か?リディア。」


涙のにじむ瞳で、
声の主をみた。


この男・・・

知ってる・・気がする。


「あぁ・・と。」

しかし、想いに反して、
名前も、記憶も、
口をつくことはなかった。


「俺の事か?情報屋のゾラだ。」

「ゾラ・・?」

・・・言語は違うが、
『太陽』の意。


 
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