危険中毒
ゾラは、
まるで、父親のような
人だ。
初対面なのに知人に感じ、
こんな場所であるにも関わらず
この人を信用してもいいと、
何の根拠もなく、感じている。
「ありがとう・・。」
消毒を終えたその男に、
思わず、そう言った。
「馬鹿言え。」
彼は、照れ臭そうに笑った。
「俺は、いつもオマエの味方だ
リディア。
・・・ああ、あいつもな。」
ゾラが、ニッと笑って、
扉の方をみた。
「ムーン!!」
「あいつの命にも関わるんだ。
脱走は、頼むから
してくれるなや。」
ゾラが肩に手を置いていった。
「それは、いうなといった。」
彼は、ツカツカと、
こちらに歩いてきた。
「全く、世話のやける奴だな。
オマエは。」
そういって。
マズイ・・・
肩に置かれた、ゾラの手に、
力が加わるのを感じた瞬間、
そんなことを思った。
「うっ!?」
猛烈な吐き気が襲う。
やられた・・・
「俺から逃げようなんざ、
百年はやい。」
そんな台詞が聞こえた。
鳩尾に食い込む拳を見ながら、
意識が遠退いた。