危険中毒
 
扉へと向き直り、
銃を構える。

同時に、

扉が、バリバリッと
音を立てて、大破した。

あんな壊れかけで、
軋んでいたドアだが、一人前に
精神的なバリケードの役割を
担い、果たしていた事を知る。

大破した扉から、
自分に向け、
塊が投げ付けられる。

グチャッと、手前に、
音をたてる様に落ちたソレを、
視線で追っていたが、
正体に気付き、吐き気をも
よおした。

さっきの扉番の男だ。


体が有らぬ方向へ
曲がっている。

穴という穴から流血し、
何度となく、扉に
叩き付けられていたのが、
彼だったと悟る。


「ひっ・・・」

冷たい汗が背筋をたどる。


「モニ・・・リディア!?
どうした?!」

頭髪の中に隠し、
耳骨に湿布するよう
配線した無線から、
ムーンの焦った声が聞こえる。

恐怖で言葉がでない。

「ムーン・・・」

つぶやいて、ハッとする。

モニターで観るって事は、
カメラがあるんだ。


呼んじゃダメだ。

甘えちゃダメ・・・。


自力で逃げなきゃ。


いや、何とかしなきゃ。


生きて、でるんだ。


逃げるって・・・

決めたんだから・・・



 
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