危険中毒
惨事が起こる事は、
考えるまでもない。


奴は、もう、
ムーンの気を掴んでいる。

その証拠に、
気配が後退している。



無意識のうちに、
通路にむかい
走り出していた。


蝋燭で、照度を
維持している廊下は、
窓がないこともあいまって、
暗くて。

一瞬、視覚を奪われる。


その一瞬を、
相手が見過ごすハズはなく、
殺気と風圧が襲う。

身体が覚えている、
攻撃の角度。

頭が命令するまえに、
身体は動き、攻撃を避ける。

そして、うっすらと視界に写る
人間の形をしたソレの
喉元に向け、かわしたついでに
手加減無しの、強烈な蹴りを
見舞った。

きれいに決まって、
相手は壁に激突する。

しかし、壁面を利用し、
その筋肉をバネに体勢を調え、
再び、その両手を振り上げ、
こちらを掴みかかる。

あえなく
絨毯の敷き詰められた床面に、
身体をたたき付けられ、
四肢を押さえ付けられる。

異常なまでに、太く伸びた
硬い爪が、肩や上腕に
食い込む。

そして・・・異様なのは

爪だけではなく、その犬歯が
牙状に形状を変え、唾液に
混ざり血がしたたっている事。






 
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