PINK OF HERO
「そういうところが好き」
白石くんのはっきりした言葉に、今度はあたしの方が驚いた。
「俺のこと考えてそう言ってくれるとこがすごいと思う。
…ていうか、なんか俺自分のことばっかりでごめん。
桃谷さんのこと全部分かるわけじゃないけど、知りたいと思ったから、言わなきゃと思って……あの…」
すごい。
あたしにそんなこと言われる価値があるのかな。
白石くんはきれいな人だ。
なんてまっすぐなんだろう。
「………」
「ほんと失礼だったよね、ごめん。
でも俺もっと桃谷さんのこと知りたいと思ってるから」
あたしは何を言えばいいか分からないまま、てくてく歩いて家に着いた。
白石くんはあたしに何も求めなかった。
アドレスも聞かないし、抱き締めたりもしない。
それが彼の礼儀なんだと思うと、やっぱりすごい人だ。