Distance of mind
「ありがとう。君が拾ってくれたの?」
握手をするときのように、また笑顔であたしに手を差し出す篠崎理玖。
「は、はい。そこに落ちていて・・・」
あたしは足元を指差して答えた。
「そっか。・・・この指輪ね、父さんから母さんへのプレゼントだったんだ。」
すこし悲しげな顔をして、篠崎理玖はこう続けた。
「母さん、もう死んじゃったけどね。」
―――え??
「え、あの・・・お、お母さんお亡くなりになってるんですか?」
知らなかった
お母さんが亡くなってるなんて・・・
聞いた事なかった。
「うんそうなんだ。TVで公開してないんだけどね。知らなかったでしょ?」
あ・・・
公開してないんだ。
だからか・・・。
「だからいわゆる母さんの形見かな。本当、拾ってくれてありがとうね」
「いえ・・・あたしは何も・・・」
本当、大切なものだったんだ・・・。
そんな大切なものに、あたしなんかが触れてもよかったのだろうか?!
そして、篠崎理玖は信じられない言葉を続けた。