びいだま

「はい、どうぞ」


腰をかがめてビー玉をつまみあげた瑞貴は、その男の子にビー玉を手渡した。


「ありがとう!!」


嬉しそうに席に戻るその男の子と、会釈をしたお母さんに瑞貴は笑ってから、


「懐かしいな~、ビー玉なんて」


とつぶやいた。




あぁ・・・・そうだ。



私の気持ちはとうにはっきりしていて。



そっと、握られた手を離すと、瑞貴は一瞬目を閉じてから息を吐きながら笑った。



ごめんね。


やっぱり、私ムリなの。


決して多いとはいえないけれど、大事な思い出が私を追いかけてくる。


そして、それに私はいちいち振り返ってしまうから。



まだ、ムリだ・・・・。


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