びいだま
『んで、遠慮しなくていいから勝手に入って。寝室は向かって右。けど、多分そこでは寝てないと思う。くれぐれも、荷物をドアのとこにひっかけて帰る、ってのはやめてね。大家さんに怒られるみたいだし』
ごめんなさい。
不法侵入してます。
だって、怒られるんでしょ?
てか・・・・なんで私が・・・。そっか。瑞貴に頼めばいい話じゃん。最初っから。
と、とてつもなく基本的な解決法にいたって、私は一旦入りかけた玄関をそっと出ようとした。
その時・・・・。
「ごめん・・・・」
ん?
これは私の心の声?
ううん。
奥から聞こえる、これは・・・・ユウの声。
久しぶりに聞く、ユウの声。
「ごめん、ごめんな・・・・」
なにかうなされてるような、その苦しげな声に、私は思わず帰りかけた足を止めて、部屋の中を覗き込んだ。