びいだま

「あの・・・」

「え?」


はっ、と顔を上げると、彼は目で上を指した。


見上げると、職員室のプレート。


「着いたけど」


「はっ・・・・あ、そっか。うん。それじゃ」


「ちょっと!」


「え?」


笑わなきゃ、笑って振り返らなきゃ・・・・


「ていうか・・・プリント・・・・・」


「ぎゃっ!あ、ご、ごめん・・・・」


急いで垣内くんのプリントの上に重ねると、上でプッ、と噴出した声が聞こえたような気がして、あわてて見上げると、そこにはいつものポーカーフェイスの彼がいた。


「じゃ・・・・ありがとう」

「うん・・・」


くるっ、とぎこちなく背をまわすと、


なんだろう、急にまた胸の奥がキュー、と押されるように苦しくて。


「垣内くん!」


振り返って叫んだ私を、職員室のドアに手をかけていた彼は驚いたように見つめた。


「あ、あの・・・・・」


なんだっけ。なんだったっけ・・・・。


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