びいだま
「やっぱ、なんでもない・・・・今から教室に荷物取りに行くんだろ?」
「うん」
「じゃぁ、コマキの分も持ってきてよ」
「うん?いいよ?」
軽く手をふって教室の中に消えた瑞貴に少しだけ違和感を感じた。
けど、あの話の後だし・・・・それも、仕方のないことなのかな、ってその時はそれしか考えることができなかったんだ。
・・・外からは風に乗って、ぱちぱちとはぜる火の音と、音楽とがかすかに聞こえてくる。
気がつけば、もう窓の外に広がる空は真っ暗闇で、私は思わず足早に教室に向かった。
瑞貴のくれたもの。
相手をいたわる優しさと、自分の気持ちを大切にする勇気。
それって・・・今の私にもきっと、ううん。絶対に必要なものなんだ、って。
それすら瑞貴が教えてくれたんだ、って思えるから・・・・