びいだま
「私がどうしてもユウを好きだから。簡単には・・・・私もこの恋を手放せないんです。生意気かもしれないけど・・・・それが今の本音なんです」
私の言葉を聞き終わると、杏奈さんは、そっか・・・、と一言だけつぶやいて一旦うつむいた後、やわらかく笑った。
「悠司が好きになる子って、どんな子なのかな、って思ってたけど・・・・」
杏奈さんがそうつぶやきかけたその瞬間に、
「果歩!」
大好きな低くて甘い声が、私の名前を呼んだ。
「ごめん、お待たせ・・・・って、なんか変なこと言われなかったか?」
そう言ってユウが私の顔を覗きこんだ時に、
バシッ!!
「いてっ」
「なんも言ってないわよっ!てか・・・言われて困ることなんてあるのかなぁ~~?」
杏奈さんのニヤニヤした笑顔に、ユウはあわてて
「ばっ、・・・・ねーよっ!絶対にねぇっ!!」
少し赤くなって、くそーっ、と頭をかいた。
「あやしー」
重なった声に、杏奈さんと私は顔を見合わせてぷっ、と噴出した。
そして、杏奈さんは私の耳元でそっとささやくんだ。
「最高だよ、果歩ちゃん。・・・・悠司を、よろしくね」
思わぬ言葉に、嬉し涙をこらえながら私は杏奈さんに頭をこくんと頭を下げた。