びいだま
春に窓から覗いてたフェンスを遠目に、今はユウの隣にいる私。
こうやって一緒に帰るのももうあとわずかだね。
…でも、私はもうあせらないよ。少しずつだけど、なんとなくさ……
「ユウ、」
「果歩、俺な」
重なった言葉に、顔を見合わせてから微笑んでうつむいた。
『なに?』
ほら、また重なった。
プッ!
クスクス…
「なんか、こういうの多いよね、最近」
私が笑いながら見上げると、ユウも照れたように頭をかいた。
話したい事がたくさんあって。
伝えたいことがいっぱいあって。
どうしてもぶつかってしまう最近の私達の会話は、それすらとても幸せなことに思えた。