びいだま
「ユウは?」
「ん?」
すっかり暖まった心で、ふと気がつく。
そういえば、ユウの…ユウの言いたかったことって?
「さっき、言いかけたことって……?」
「あ~~……うん」
ユウは、空に向かって小さく白い息を吐き出した後、握った手に少し力を込めた。
「果歩、あのね……」
その時、無粋にも終業式の開始を知らせる校内放送が鳴り響いた。
「あ、始まる……行こっか」
「え?ユウ?」
呼びに来たはずなのに、この時間が終わるのが惜しくて、ついユウの制服のジャケットの裾をつかんだ。
それに、ユウ…ユウは、何を言いかけたの?
真剣な表情を…してたでしょ?
「今日はさぼるなよ、って言われてんだ。担任に。果歩、行こう?」
「う、うん……」
それが、なんとなくさっきの言葉をごまかすように聞こえたのは、私がさっきのユウの表情を気にしすぎてるせいなのかな。
ほんの少し湧き上がる小さな不安をかき消すように、私はユウの背中を追いかけた。