びいだま

「笑った」


「え?」


「なんかさ、お前すげーきびしー顔してたから。眉間にしわ寄せてさ」


「えぇっ??」


思わず眉を触ってみた私の頭をコンと小突いて瑞貴は歩き出した。


「ばか。冗談だって!けど・・・あんまり思いつめんなよ?」


「・・・・・思いつめてなんか・・・ないよ・・・・」


小さくつぶやいた言葉が瑞貴の耳に届いたのか届いてないのか、彼は渡り廊下のベンチを指差して「なんか飲む?」って振り返った。



「てか、座れ。ほら、早く」


「あ・・・うん・・・・」



私に腰を降ろさせて、瑞貴は脇にある自動販売機の前で小銭を入れ始めた。


そうだ。



「瑞貴、この前、ありがとうね」


「ん~?・・・・って、果歩、コーヒー牛乳でよかったよな?」


「あ、う、うんっ」


「オッケー・・・っと」



ガチャン、と音がして、暖かいコーヒー牛乳を瑞貴が、ん、と差し出した。


「ありがとう・・・」


そして、瑞貴はまた自動販売機に向かう。


「俺、何にしよっかな~」



私は暖かいコーヒー牛乳のパックを両手で包みながら、切り出した。



< 254 / 486 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop