びいだま
じりじりと太陽が照りつける下で、濡れたシャツはそばから水分を蒸発していってるみたい。
シミにならないかな。
シャツをパタパタさせる私の横で、笑いが収まった垣内くんは空になったラムネのビンをじっとみつめていた。
「昔さ」
「・・・・?」
「友達何人かで遊んでても、俺と瑞貴だけ絶対に欲しいビー玉の色が同じなんだよな」
垣内くん、嬉しそうに笑ってる?
「それで、飲み終わった後けんかになったりしてさ。ビー玉1個のことで絶交だ、なんつって・・・・」
垣内くんがこんなに長い話をしてくれるのは初めてで、私は相槌を打つのも忘れて聞き入ってた。
「それからどーしたんだろう、って覚えてねぇんんだけど・・・・。要は好きなものが似てんだよな。俺ら・・・・・」
ふー、と息をついた垣内くんの声が、周りにうるさく鳴いているセミの大音量にかきけされそうで、私は耳をすました。
「仲がいいんだけど、いっつも最後は喧嘩して、そんで・・・・・・マアコがでてきて仲直り」
マアコ?
「マアコ、って?」
「・・・・あぁ・・・・俺らの幼なじみ。水島真亜子」
ジージー、と鳴き続けるセミの音が、胸の奥に苦く響いていく。
もしかして、って・・・ううん、絶対・・・多分、そう。
「垣内くん、マアコちゃんのことが好きだったの?」
「・・・・・どうだろ」
もう一度ビンを眺めてから、垣内くんはそれをベンチ横の四角い空き缶の中にほうり投げた。