びいだま
コマキは、あっ、という顔をして、周りを見渡してからひそひそと私にささやいた。
「これ・・・・果歩、知ってたの?」
そこに写るのは、照れくさそうに微笑むユウの写真。
もしかして・・・
「そういえば、ユウが言ってた。小畑さんに冗談半分で写真を撮ってもらったって。でも、それだけだって・・・」
けれど、雑誌の記事は、ちょっとした新人モデルさん扱いのようなタイトルで、ユウの写真を彩っている。
「この雑誌、結構人気あってさ、さっき他のクラスの女の子達が騒いでたよ。特に、このコーナーは新人モデルの登竜門的なとこがあってさ・・・」
「・・・・ふ~~ん・・・・」
「ふーん、じゃないんだって。それだけならいいけど、この写真の男の子が文化祭の時の黒王子に似てないか、ってそこまで噂になってる、って知らないでしょ?」
「は?」
あの騒ぎはまだ、おさまってなかったの?
クラスメートのひとりが、もう随分と学校に来てない事には無頓着のくせに、
幻のような「黒王子」の存在には、時間がたっても関心があるんだ・・・・
私は思わずため息をついてユウの席をもう一度みつめた。