びいだま

本当に、これじゃ・・・・ユウに気持ちを伝えられなかったあの頃と同じだよ。



「何言ってんだよ・・・」


「え・・・」


「しっかりしろ。果歩。お前そんなんじゃなかっただろ?」



瑞貴はユウの机を見つめたまま、言った。



「・・・・・」


「今の果歩の気持ち。伝えたい気持ちがあるなら、言ったほうがいいよ・・・・・・それはお前もわかってんだろ?」



思わずうつむいた私の頭の中に、浮かんでくるのは夏祭りの花火、ユウのマンション、ラムネ瓶の水滴・・・・。


やっぱりこの恋を離したくはない。


ユウ・・・・・。



「言って、いいのかな・・・・伝えても、いいのかな」



つぶやいた言葉と共に、涙の粒がひとつ落ちた。



「・・・いいに決まってんだろ?・・・きっとあいつも待ってるよ、っていうか多分同じ気持ちなんじゃないかな」



「・・・・うん」



「だから・・・・がんばれよ~果歩」



そう言いながら瑞貴は私の髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でた。



「ん・・・ありがとう・・」


ありがとう、瑞貴。




< 282 / 486 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop