びいだま
時々、廊下を通る足音のほかには、静かな教室の中で、
ズズッ・・・
「ぷっ、お前、鼻すすんなよ」
「だって・・・・・、ごめん」
でも気づいてるよ。
笑いながら、からかいながら、それでも私の涙が乾くまで黙って待ってくれてる、って。
「瑞貴は・・・・なんでそんなにやさしいの?」
思わずつぶやいた言葉に、瑞貴は少し驚いたような顔をしてから、私の頭をぽんとひとつたたいた。
「優しくなんか、ないよ」
「優しいよ」
「・・・優しくないって・・・・。俺は、ユウが好きだから・・・ってそういう意味じゃないからな!」
「あはは、わかってるよ」
「ユウが、好きなんだ。果歩も・・・・好きだよ。友達としてな」
勝手に胸がドキンと跳ねたのは、夕暮れのオレンジ色が瑞貴の横顔を照らし出して、それが綺麗だと、思ったから。