びいだま

「俺さ、帰るのが早まるかもしれない」



「・・・へ!?」



思わず出した変な声に、ユウは大きな声で笑ってからもう一度言葉を繰り返した。



「帰るよ、果歩」



帰る・・・・、って今言った。



ユウ。



ウソじゃないよね。



「小畑さんはまだこっちにいるんだけど、俺は早めに日本に帰って姉ちゃんの会社に就職。4月から。だから・・・・」


「ホント・・・・?」


「あぁ。てか、小畑さんがもう帰れ、って。電話代の方が高くつくから面倒だって」


「・・・・ユウ・・・」


「笑えよ、そこ」



そんな、余裕なんて全然ないのわかってるくせに。


やっぱり意地悪なところは全く変わってない。



「けど、ごめんな・・・・卒業式には、ちょっと間に合わないかもしれないけど」


「・・・う、ううん。そんなの、別に・・・いいから」



人って本当に欲張りになるよね。


余裕がなくなるほど喜んだ後に、卒業式に帰れない、って聞いたとたんにちょっぴりがっかりしてる自分に、我ながらあきれた。




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