びいだま
ガタン。
椅子から立って、カバンを肩にかけ教室を出て行く彼の姿を見送ってから私はようやくその手を離した。
「コマキ~~~・・・・もう、勘弁してよ~~」
「こっちこそだよ。・・・・・・てか、別にばれてもいいんじゃね?」
「え!?」
コマキは長い髪の毛を指でくるくるさせながら、私を覗き込んだ。
「だって、あいつ絶対に女いないし」
「そ、そうなんだ・・・・・・って、知ってんの?コマキ?」
飛びついた私の腕を、面倒くさそうに外しながらコマキは続けた。
「だって・・・・見たらわかるじゃん。女絶対にいないって。あれでいたら・・・ちょっとびっくりだし」
ほっとすると同時に、少しだけむっとする。
そんな私に構わずにコマキは今度は私の腕をつかんでひっぱった。
「それよりも、王子だよ、王子!そろそろ時間じゃない?」
「え、ちょっとっ!私は別に・・・・・」
引っ張られるように廊下の窓から外を覗くと、校庭でサッカー部の人たちがストレッチを始めたところのようだった。