びいだま

案内された病室に入ると、



あんなさんはぽんと私の頭を叩いて、コマキと外に出て行った。



その仕草が、あんまりユウに似てたから、思わず泣きそうになるのをぐっ、とこらえて、ドアを後にするあんなさんとコマキに小さく礼をした。



そして、ゆっくりとベッドの方に向き直る。



ユウ・・・・



「ユウ?」




そこにいる、数ヶ月ぶりの彼は、包帯がまかれた頭が少し痛々しいけど、ねむってるように穏やかに息を繰り返していた。



よかった・・・・



「ユウ・・・・」



少し、ヒゲが伸びたんだね。


髪の毛も、伸びて、軽くパーマなんか・・・かけちゃって・・・・



こんな時なのに・・・・やっぱり素敵だ、なんて思っちゃう。



でも、こんな風に思えるなんて・・・・



生きててくれる、ってことだけで。


ユウが生きてそこにいる、ってことだけで。



こんなに、幸せなことなんだって、あらためて感じるよ。




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