びいだま
すきな人
「キャーッ!!・・・・あ~、かっこえー」
おいおい・・・・前半ギャル、後半おっさんかい。
芝生の上で、コマキと一緒に応援してるのは、サッカー部の練習試合。
夏真っ盛りの日差しが容赦なく照りつけてくる。
「・・・あ、王子こっち見た・・・・」
コマキがつぶやいて、私をそっと見やった。
「・・・ホントに・・・・・ホントに断っちゃったんかい!!こいつ~~~」
「きゃーっ!!」
私の髪の毛をぐしゃぐしゃとかきまわして、コマキは一息ついた。
「・・・・本当に、あいつのことが好きなんだね・・・」
コマキはあえて「そっち」をみないようにグラウンドを見つめたままつぶやいた。
「・・・・うん」
「そっち」に立って、試合にカメラを向けてる垣内くん・・・・今では王子とも仲良くなっていつしか王子が瑞貴、垣内くんがユウって呼び合えるまでになったけど・・・・
この距離はあのときのまま。
自分で選んだこととはいえ・・・カメラを持ってるユウを見ると、心がほんの少し痛む。
「マアコに今度の夏休み2人で会いに行くんだって」
「・・・・そっか・・・」
事情を聞いたコマキは何も言わずに頭をよしよしとしてくれたっけ。
そして、私はいっぱいいっぱい泣いたんだ。