びいだま
「そういえば・・・・」
私が涙をハンカチで押さえるのを見て、ユウが話を切り出した。
「俺の友達にもさ・・・・大学目指して頑張ってた奴がいたんだ・・・・」
・・・・・!?
「って、あれ?瑞貴・・・は、サッカーだし・・・・・・誰だったっけ・・・・」
心臓が口から出るくらいに、バクバクと大きく跳ねている。
ユウ、それは、私だよ・・・
ってすんでのところで言いかけたその時に、彼は、あぁ、そうか・・・、と遠い目をして言葉を続けた。
「マアコ、って子がいるんだ。その子が大学受験を考えてる、ってそういえば昨日マアコの母さんから聞いたんだっけ」
ぼそぼそと自分に言い聞かせるように話をするユウの横顔に、何度も何度も奈落に突き落とされるような感覚になる。
「この前も言ってたけど、マアコ、って俺の幼なじみの女の子なんだけど、手術を受けてね、目を覚まさないんだ・・・」
「うん・・・・」
実は手術の後、集中治療室に移ったマアコはまだ目覚めてはいなかった。
「手術自体は成功してるはずなのに・・・なんでなのかな」
悔しそうに首をかしげるユウの瞳には、もう私は映ってはいない。
というより、ここに私がいることにすら意識がとんでないようにも、見えた。