びいだま
「あ・・・ごめんな」
彼の視線が私の目元に注がれた、ということを自覚するのと同時に気がつくのはまたいつの間にか新しい涙が頬をつたった感覚。
「・・・・・っ」
言葉につまる彼の戸惑った表情に、泣いちゃいけない、って思うけど・・・
どうしよう、とまらないよ~・・・。
と、その時。
「悠司、起きてる?・・・・って果歩ちゃん・・・」
ガラッ、と開いたドアに、振り返るとあんなさんが私とユウの顔を見比べて、一瞬複雑そうな顔をした後にきっ、とユウをにらんだ。
「あんたっ、何したの?」
「は!?なんもしてねーよ・・・」
「ち、違うんです。私が勝手に・・・ごめんなさい。こんな・・・」
泣くつもりなんてなかった。
我慢できると思ったのに。
ユウの笑顔を見てしまったから。
余計に「忘れられてる」っていうことが現実なんだって・・・・
「すみません・・・・私、帰ります」
「果歩ちゃん・・・・」
あんなさんに肩を抱かれながら、そっとユウを振り返ると、彼はなにか言いたそうに口を開けたけど、それをまたすぐにつぐんだ。
ユウ。
「私はここにいるよ」
って言う言葉を私も言うことが出来ずに、病室を後にした。