びいだま

「とりあえず・・・頭を上げてください。ていうより、あやまられる、ってどういうことかわからないんですが」



あんなさんの言葉に、ようやく頭を上げたマアコのお母さんは少し口を結んで目を閉じてから話しはじめた。



「あんなちゃん・・・果歩さん・・・・どうか、このままでいてやってもらえませんか?」



は?



お母さんの言ってる意味がわからず、私達は目を合わせた。



「マアコは目を覚ましません。それはもしかして・・・・あの子が目を覚ましたくないんじゃないか、って私は思ってるんです」



「え?」



それって、どういう・・・・・



お母さんは私を見て、少し言いよどんでから、意を決したように言葉を続けた。



「マアコが悠司くんを好きだから」



「え?」



何を言ってるんですか?



「いや、だって・・・・マアコには好きな人がいるって、マアコが・・・・」



マアコが好きなのは主治医の先生だって、あんなに嬉しそうな顔をして言ってくれたあの表情を私は思い出していた。



「先生の、ことですか?」



はい。


言葉に出さずにうなずくと、おかあさんはため息をついて視線を落とした。



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