びいだま
「あの子は・・・・」
そう言って、マアコのお母さんは静かに話を続けた。
「思春期の、一番恋をしたい時期にずっと病院にいました。そのせいか、自分の気持ちを言うのは恥ずかしい、というかどう伝えていいのかわからなかったんだと思います。でも・・・・私は母親です。マアコが誰のことを好きなのかくらいすぐにわかります」
胸が・・・・・つぶされていく。
「悠司君の撮ってくれた写真を眺めるのが一番のお気に入りでした。私は・・・・悠司君を縛り付ける言葉を言っておいて、それでももしそのせいで彼がマアコのことを気にかけてくれるんだったら・・・それでもいい、って・・・・」
「そんな・・・・・そんなこと・・・」
そういったのはあんなさんだった。
「悠司がどれだけあの時思いつめてたか・・・・・」
「だけどっ」
静かな部屋の中にお母さんの一言が響いた。
「だけど・・・・悠司くんが選んだのは・・・他の女の子でした・・・・」
決して私と目を合わせようとしないマアコのお母さん。
そういえば、こんな感じは、マアコのお見舞いに来るたびに感じていたことだった。
でも、そんなことを思っていただなんて、気がつきもしなかった。