びいだま

「でもさ・・・・」


シャッターの音がしなくなったから、横を見ると、ユウはカメラを胸の前で構えたままつぶやいた。



「・・・なんか、違うんだよな・・・・・」



「・・・・?」



「俺、それだけじゃないような気がするんだ・・・・」



彼の言ってる意味がわからなくて首を少しかしげた。



「俺・・・・もっと大事なもののために、写真を撮ってたような気がする・・・・」



顔をしかめたユウがゆっくりと私の方を向き、それからじっとカメラを見つめた。



「・・・・あぁ、ダメだ・・・っ!」


ユウは悔しそうに息を吐いて、フェンスに背中をもたれかけた。



「悠司くん・・・・」



「俺、なんか変なんだよね・・・・。小畑さんについてアメリカに行って、でもなんで予定よりずっと早く日本に帰ってきたのか。全然わかんね~・・・・」



苦しい。


胸が、体が、全部全部苦しいよ。



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