びいだま

廊下の隅。


力なく壁にもたれた瑞貴の背中が大きく揺れた。



「どうなってんだよ・・・・マアコは目を覚まさないし、ユウは・・・・ユウは一番肝心なもん・・・・・忘れてんじゃねぇよっ!」



ドカッ!


と振り下ろされた拳が、壁に当たって大きな音をたてた。



「瑞貴・・・・・」



「果歩もっ・・・・お前平気なのかよ・・・・」


「・・・・・」


「忘れてんなら、思い出させてやればいいだけの話だろ?あいつ、きっとすぐに思い出すよ」


「・・・・平気なわけ、ないよ・・・・」


「果歩・・・・」



手をぎゅっ、と握り締めて、唇をかんだ。



「平気なわけ、ないじゃない」


「・・・・ごめん」


「けど・・・・ユウは・・・・なくしちゃってるの・・・・。私のことも、大切な思い出も全部・・・・」


「果歩・・・・」


「ホントは・・・」



・・・とまらない。


瑞貴の顔を見た途端、今までようやく我慢していた気持ちが一気にあふれて出した。









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