びいだま

「ホントは・・・・今すぐにユウに思い出してほしいよ。いっぱいいっぱい約束したこともあったから。思い出して、私を見て、って言いたいよ」



私のその叫びは、途中から嗚咽に変わる。


悲しくて、苦しくて・・・・会いたくてたまらなかったのに・・・その人が目の前にいるのに触れられないなんて。



「マアコじゃなくて、私を見て・・・・って本当は言いたいよ・・・・」



これが私の本音。



「マアコ、って・・・・?なんだよ、それ」


いぶかしげに私の肩をつかんだ瑞貴に、私はごまかす余裕もなくて、ゆっくりとマアコのお母さんの話を伝えた。


「は?何それ・・・なんだよ、それっ」



座ってたソファから、勢いよく立ち上がった瑞貴は、ユウの病室に足を向けた。



「待って!だめっ!・・・・言っちゃダメ!・・・・お願い、瑞貴・・・・」



腕をつかんだ私を見下ろして、瑞貴が悔しそうに唇をかんだ。



「なんでだよ・・・・。そんなの・・・お前の気持ちとユウの気持ちはどうなるんだよ・・・」



「・・・・・ユウは絶対に苦しむだろうから・・・・・マアコが・・・ユウのことが好きだって、それが本当だったら、絶対に自分を責めるよ・・・・私のことを思い出したら、きっともっと辛くなる。だからお願い・・・・」



瑞貴は、もう一度ぐっ、とユウの病室を向いてから、ドスン、とソファに腰を下ろして両手で頭をおおった。


「はっ・・・・わけわかんねーよ・・・お前も・・・ユウも・・・・・」


「・・・・・ごめんね・・・・・瑞貴・・・」








< 355 / 486 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop