びいだま
ユウは立ち上がった瑞貴の肩をポンポンと叩いてから、ふりかえり、目を伏せたまま私の横を通り過ぎた。
「あ・・・・・」
何か話さなきゃ。
何か、言わなきゃ・・・。
目を上げた私の視線の先で、ユウが少し笑ったのが見えた。
え・・・・・?
「バイバイ」
小さく聞こえた彼の声に、頭を横にふるけど、ユウの足音は背中の向こうに遠ざかっていく。
ユウ。
私を一度も見なかった。
ユウ。
ユウ?
ギューッと胸が締め付けられて、言葉すらでない。
たまらなく閉じた目から涙がこぼれた。