びいだま

言いたくなんかない


………

目が覚めたとたんにため息が出るなんて・・・・



今日は、入学式の朝なのに。



新しい生活への第一歩。



重い頭を上げると、鏡の中の私の顔・・・・



「ひどすぎ・・・・」



目は晴れてるし、なんかむくんでる・・・・。



昨日の夜・・・・眠れなかった。



もうダメなのかな、という思いと。


一瞬だけ感じることの出来た前のユウの表情とが


感情をごちゃごちゃにかきまぜて、全然ダメだった・・・。



ようやく眠れても、


見る夢は、決まってて。


記憶を失う前のユウと一緒に、行った事のないはずの遊園地とか映画とか・・・・


すごく楽しいはずなのに、


とても幸せなはずなのに、



うなされるように目が覚めて、その度ごとに、にじんでる涙を拭うんだ。



あの日から・・・・


あの事故の日から・・・


日ごとに重くなる体を、なんとか動かして玄関の扉を開けた。
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