びいだま

まるで魔法が解けたようなその空間の中で、私はそれでも声を出せずに固まってしまった。



ユウが手にした光の粒が、小さなリングだということがわかったから。



「ユウ…お前、何してんの?」


「……」


ユウは何も答えず、少しぼんやりとした眼差しのまま、手の中の指輪を見つめた。


「……なんだよ、それ…?何してんだよ、お前……」


瑞貴にもう一方の腕をつかまれたユウは、抵抗もせずに、つぶやいた。



「……わかんねーんだ…」

そして、指輪をぎゅっ、とにぎりしめた。


「今朝……荷物を整理してたら、俺を助けてくれた救急隊の人が持ってきてくれたんだ…俺のじゃないか、って」


「……」


「倒れてる時に握ってたらしいんだけど……全然記憶にない……」



もう一度開かれたユウのてのひらの上。

そこには、シルバーのリングに透き通るような水色の石。




ふと、あの青空の下で飲んだラムネの色を思い出した。



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