びいだま
「今月号にも出てる~~っ!」
「超いいよね!ユウジ!」
授業がまだ終わってもないのに・・・・
後ろの席で当たり前のように女の子がキャーキャー言ってる。
先生は・・・小さくため息をついて教室を出て行った。
これがいつもの風景。
大学生活、って思ってたのとなんか違う、ってことも、入ってすぐに慣れた。
ノートをカバンに詰めて、教室を出ると、窓の向こうに抜けるような青空が広がってる。
けど、胸がちくちく痛んで、私は目をそむけて歩き出した。
・・・・ユウが写真を撮ってない、って聞いたのは、確かあんなさんから。
あんなさんの会社にもほとんど出勤しなくなったことに、アメリカから帰ってきた小畑さんが激怒して、クビになったとも、聞いた。
ユウは・・・ううん。いまや「ユウジ」は、アメリカに行ってるときに撮られた写真で人気に火がついて、街を彩るポスターの主人公に、なってる。
ポスターの中のユウは・・・・
すこしすました顔で、きれいなモデルの女の子を後ろから抱きしめてる。
それがすごく色っぽいって、評判らしい。
このところ、テレビでもちょこちょこと彼の話題を聞くことも多くなった。
私は・・・ユウとは・・・あれから会っていない。
あんなに会いたくてしかたなかったのに、そんなことにも少しずつ慣れはじめてる自分にふっ、と笑いが出た。