びいだま
「ユウ・・・・」
つぶやいた名前は、きっと誰にも聞こえない。
酔っ払ってるせいなのかな。
こんなところで、会うはずがないのに。
こんな偶然、あるはずないのに・・・。
だけど・・・・
「ユウジッ!お待たせっ!」
ドンッ、と後ろからぶつかられてはっと顔を上げると、さっきの女の子が目の前の男の子に向かって走っていくのが見えた。
「名前呼ぶな、つーの・・・」
「ごめんごめん」
サングラスをして、金髪に近い髪の毛のその男の子は・・・
やっぱり見間違いかも、と思うくらいに軽くその女の子の腰に手を回した。
違う。
ユウじゃない。
ユウじゃない、よね・・・・。
軽いめまいを感じて、壁に手を着いた時に、後ろから声がした。
「果歩?大丈夫か?」
瑞貴・・・。
と言いかけた瞬間に、瑞貴が表情をこわばらせてまっすぐに私の先を見つめ、つぶやいた。
「ユウ・・・・」