びいだま

瑞貴の声が聞こえたのか、男の子がゆっくりとこちらに顔を向けた。



「あれ?瑞貴じゃん。久しぶり!元気?」



こんなユウの声、聞いたことがない。


でも、それはまぎれもなくユウの声そのもの・・・。



ぎゅっ、と唇をかんだ私の横で、瑞貴が少し低い声でユウに近寄った。



「お前・・・・どうしちゃたの?」


「あれ~、もしかしてサッカーの大久保瑞貴じゃん?すげー。かっこいいっ!ね、ユウ。友達なの?もしかして・・・」


「てか、あんた黙ってて」



瑞貴は隣の女の子にそういうと、そちらを見もせずにユウをにらんだ。



「ユウ、お前何してんの?」



「なんか・・・・そればっか言われんな、俺」



ハハッ、と笑ってユウは顔をあげた。




あ・・・・・。




今、一瞬、目が合ったのかな、って思ったけど・・・・彼の表情は、サングラスに隠れてわからない。



「ユウ、カメラはどうしたんだよ」


「あぁ・・・・やめた。あんなの、やめたよ。こっちのほうが楽だもん。な?」


瑞貴の質問に、ユウはなんなくそう答え、女の子の腰をひきよせた。




ズキッ・・・




忘れかけてた痛みが、全身を鈍く貫く。



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