びいだま

急に力がぬける。



壁に伝ってずるずると腰を下ろすと、わけのわからない感情がぐっ、とせりだしてくるのがわかった。



けれど、それをとめる術を私は知らなくて、



両手で顔を覆うと、次々と熱い塊が涙になってこぼれだした。



「どうして・・・・?なんでぇ・・・?」



なんで、写真をやめたの?


なんで、私の名前を呼ぶの?


どうして・・・・キスをするの?



ユウ。



この瞬間にも感じてる。


ユウが好き。


やっぱりすごく好き。



けど・・・・


気がついちゃったの。



暖かい感触を知ったから、余計に離れた唇が冷たく感じるんだ。



そして、今一番強く感じるよ。



ユウが、私のことを忘れてしまったこと。


思い出をなくしてしまったこと。



今一番、感じてしまうんだ・・・。



これが現実、なんだって・・・・。



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