びいだま
頷いた私を、あんなさんは嬉しそうに見つめた。
「今日は来てくれてありがとう。ここね、小畑のお気に入りの場所なんだ。ほら、アメリカから帰ってきたばかりでしょ?小畑。最初の撮影はここがいいってご指定だったんだ」
「そう・・・・なんですか・・・」
この場所が思い出の場所だなんて、とてもいい出せなくて、私はわずかに笑って見せた。
そんな私を見て、あんなさんは優しそうに目じりを下げてからつぶやいた。
「果歩ちゃん、ごめんね・・・・?」
小さくつぶやいて、ぐいっ、と自分の目じりを拭うとぐしゃぐしゃと私の頭をなでた。
あんなさん・・・。
ユウがあんなさんのいる会社をやめて部屋を出て行ったんだ、っていうことはこの前瑞貴から聞いてる。
あんなさんも、ショックを受けてた、って。
だけど、そんなこと、微塵も見せない様子で、明るく私を迎えてくれる。
あんなさんは・・・強い。
だから・・・憧れるんだ。
「あんなさん・・・私、大丈夫です」
私の言葉に、あんなさんは驚いたような表情をして私を見つめた。
「果歩ちゃん・・・」
「あんなさん、ですか?」
あんなさんが私の名前を言いかけた時に、その背中越しに元気な声がしてぴょこっと女の子が顔を出した。