びいだま
もしかして、私がこの場を避けるように帰ろうとしてたの、小畑さんは気づいてたっていうの?
軽くウインクしてみせる小畑さんは・・・・きっと気づいてる。
私が逃げようとしてたこと。
この場だけじゃなくて、
他の誰もない私が、過去しか見てないことも。
ユウに対しても・・・瑞貴に対しても・・・・・
過去にとらわれて、思い出にひきずられて
今を見てないのは、私だったんだ。
「ホントにいい子だね、果歩ちゃん。いつか・・・・写真撮らせてくれる?・・・・・あいつがしないって言うなら・・・・」
終わりの言葉をぼそぼそと、ごまかすようにつぶやいた小畑さんは、笑いながら私の肩をぽんとたたいて風のように通り過ぎた。