びいだま
ここは、さっきの撮影場所じゃない。
白く低い天井と、小さな窓に目を泳がせた。
「少しだけ眠ってたんだよ。ハシゴが落ちてきたの」
あんなさんの言葉に、記憶がまざまざと思い浮かんでくる。
「じゃ・・・・瑞貴、後お願いできるかな。私戻るね」
瑞貴の肩を叩いて、部屋を出かけたあんなさんに思わず声をかけた。
「あんなさん・・・・っ」
「ん?なに?」
「私・・・・」
誰かに・・・・包まれてた?
そして・・・・それは・・・・・あの優しい懐かしい香りは・・・・・
一人しか・・・・。
もしかしたら・・・・
もしかしたら、彼が・・・・・。
そんな私にあんなさんは一瞬だけ目を伏せてから、何も言わないまま
もう一度瑞貴に視線を移して
「よろしくね」
と言って、部屋を後にしたんだ。