びいだま

・・・


「こんにちはっ」



ドアを開けると、風が吹き抜けていく。



変わらない。



「彼」がいた時と変わらない風のにおい。



季節は変わっても。


時は移っても。



だけど・・・・



「あははっ。また鼻ひくひくさせてる~~」



ベッドの上からの笑い声に、閉じた目を開いて笑った。



「ひどっ、鼻ひくひくなんてさせてないよ~!」


「え~~?させてるよ~・・・またにおいかいでたの?風の」


「・・・・うん。夏のにおいがまだ少し残ってるな、って・・・・。マアコはしない?」




椅子に座りながらたずねた私の前で、


マアコは首を少しかしげてみせた。













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