びいだま

「・・・・果歩・・・・行く?」


「え?」


「一緒に、行ってもいいよ」


「は?なんで!?行くなんていってないし・・・行く意味もわかんないし・・・!」


なんでそんなこと言うの?


コマキは全部知ってるはずなのに。


たくさん泣いたことも。


全部知ってるくせに。


「・・・王子がさ・・・・・誘ってくれ、って」


「瑞貴が?」


「王子、知ってるよ?果歩が垣っちのこと好きだったって」


「・・・・・」


「見てたらわかるって・・・・きっと・・・・王子も・・・」

「コマキ!!やめてよ」


やめてよ・・・。


せっかく・・・・忘れようとしてるのに・・・


会えない時間がこんなにも辛いなんて、


どんどん、どんどん、好きの気持ちが止まらなくなるなんて、


・・・知らなかった。


わからないように、蓋をして、目を塞いで・・・・


知らないふりを・・・・気がつかないふりを・・・・



< 55 / 486 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop