びいだま

「ちょ、ちょっと・・・・瑞貴!」


「ん?」


「手・・・・」


「あ?・・・あぁ」



瑞貴はようやく気がついたように手を離してから、きょろきょろとあたりを見回した。



「家、どっち?」


「右・・・・、って違~う!・・・大丈夫だよ。すぐだもん」



完全に私の後半の言葉なんて無視して、瑞貴は右を向いて歩き出した。


「瑞貴!」


ようやく、立ち止まったまま、瑞貴が何かつぶやいたように見えた。


「・・・・・チャンスくらいくれよ・・・」


「え?何?」




「何でもないっ!ほら、ついてこねぇと、俺このままずーっとこの道行くからな」


「へ?」


「お前がいなくてもずーっとずーっと止まらないから」



「ちょ、ちょっと待って~~」


走り出す私を、少し前に進んだ瑞貴は楽しそうに見つめた。



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