びいだま
「・・・・好きだ」
耳元で響く甘い声に、ようやく我に返ると、瑞貴がその長い腕の中に私を包んでいるのがわかった。
・・・・抱きしめられてる?
「み、ずき・・・・?」
「だって、今、果歩が泣いてるのは・・・・ユウのことを思ってだろ?」
違う・・・・とは言い切れない。
確かにさっき、一瞬頭に浮かんだのは、ユウの寂しそうな笑顔だったから。
「あいつのことでもう泣くなよ」
「やだ・・・・なに、言ってんの?」
必死で腕の力をこめて瑞貴の体から離れると、彼は大きく息をついてから、つぶやいた。
「果歩は・・・・ユウのことが・・・好き・・・なんだろ?」
ううん、って言いたいのに、出てきた言葉は簡単に私を裏切った。
「うん・・・・ユウが好き。どうしても・・・好きなの」
それは多分、本当のことを、本当の気持ちを瑞貴には言わないといけないと思ったから。