はかなき恋のうた~NAGASAKI・軍艦島
「あっ…傘…」と俺が言うと

「それあげるから、元気出して…ねっ!」と言って少女は両親のところへ走って戻った。



それから…その傘をさしたまま…俺の思考はまたしばらく過去の狭間で彷徨っていた。

ところが…さっきの少女の笑顔が瞼から消えることはなく…さっきまでは死ぬことしか考えていなかったくせに…



ーー死ぬまで…もう少し生きていてもいいか?…夏子…

ーー死ぬ時は誰だって死ぬんだよな…   と。



それで…俺は一度は考えた「自殺」という選択肢を思い止まった。



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