はかなき恋のうた~NAGASAKI・軍艦島
「おいっ!」
真樹はそれが誰だか分かっているのか、それ以上は何も言わない。

「だ~~~れだ?」
真樹が少女の手をとり、「そんなことしたら仕事できないだろ」と少女をたしなめるように手をゆっくりとはずすと、少女は「ごめん…」と神妙な顔で謝るが、すぐに今度はこれ以上ない程の可愛い笑顔で「あとどのくらい?」と甘えた声で聞いた。


真樹は「5分位…いつものベンチで待ってて」と言ってまた仕事に戻る。


お客さんの初老の女性はただニコニコと笑いながら二人を見ていた。



「娘さん?可愛い子ですわね」とその女性が言うと、ベンチに行きかけた少女は「違いま~す!」と言って振り向いた。

「あら…娘さんじゃなかったのね、ごめんね…おばさん、てっきり親子かと思ったわ」
「ま…そうですね」
「あたし、彼女です!」

少女の言葉に真樹は戸惑っていたが、その女性はただ微笑んでいた。


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