二人で一人〜永遠に
俺は千冬に頭を叩かれた。

『何すんだよ!』

『バカ!おもちゃの指輪を買いに来た訳じゃないのよ?!』

『だってお前が!…』

『こっちよ!』

千冬は、俺の体を後ろに回転させた。

『えっ?』

『ここよ!』

俺の目の前に在る建物は、真向かいとそんなに変わらず感じた……。

周りの店と違うところは…建物が古く…店の中も客は居なく…店の前を通る人は、店に見向きもしないで素通りだ……。

『…何でここなんだよ?指輪を買うなら、最も綺麗な店を…』

『二人の大好物が挟まれた店だから!!』

『はっ!?』

俺は、突然真面目な顔をして言った千冬に驚いた。

『コーヒー!それにクレープ!』

『ちょ、ちょっと待てよ!そんな理由で、この店に決めるのか!?』

『うん!』

千冬は、眼をキラキラさせながら言った。

『…大好物って食い物の事を言うんだよな?』

『…ん?……』

千冬は、一瞬考え込んだ。

『…だろ?』

俺は、千冬の顔を覗いた。

『…飲み物も大好物に入るわよ!…もうこのお店で指輪を決めるから!』

『ちょ!ちょっと待てよ!』

店に入ろうとした千冬の腕を俺は掴んだ。



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