二人で一人〜永遠に
――六月頃の事だった――


俺達は今居る埠頭へ来ていた。


『綺麗な満月…』

千冬は、夜空を見上げていった。

俺は千冬の膝枕で月を見た。

『…まぁまぁだな、冬の月の方が一番綺麗だ』


〔パチッ!〕

『痛っ!何で叩くんだよ!?』

俺は千冬におでこを叩かれた。

『綺麗に見えなくても!今だけ話を合わせて、 「そうだね!綺麗だね!」 って言えばいいじゃない!!』

『俺は、ただ正直に言っただけだろ!?』

俺は起き上がり言った。


『何もかも、素直に!正直に!言う事は無いのよ!時には人を傷つける事だってあるんだから!嘘だって必要な時が有るの!分かる!?』


『……傷ついたこと有るのか?…俺の言葉で千冬は…』


『沢山有るわ!今まで沢山!』


『…ごめん…』

『…嫌!』

『えっ!?』

俺は、千冬の顔を見た。

千冬は、ちょっと嫌な微笑みで俺を見ていた。

『…私のお願い事聞いてくれるなら、許してあげてもいいけど』


『願い事?…』

『そう!願い事!』

俺は、嫌な予感がした。

『…何だよ、その願い事って?』

『欲しいの!』

『はっ?…何が?』





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