二人で一人〜永遠に
私の前で、椅子が動いた音がした。


【…陵君】

〔…コツッ、コツッ…〕


陵君の靴音が、動き出した。


「…陵君!ごめんなさい!怒らせるつもりは!…」


私は、椅子から立ち上がり、帰ってしまう陵君に言った。


【!!】

私の肩に温かい、ぬくもりを感じた。

「…陵君…」

私の傍で、鈴が鳴った。



私の両肩に手を置き私を椅子に座らせた。


【…………】

私の隣に、陵君が座るのが、わかった。

「…陵君、ごめんなさい」


【…!?】

陵君は、私の手に触れ指を握った。

【…『何も、謝ることは、ないよ…この仕事に就いたのは、どんな障害をもっていても、以前の世界から背を向けないで、欲しいと感じて、この仕事を選んだ…僕は、最低な人間だから…』!!】


「あなたは!…あなたは最低な人間じゃない!」

千冬は、俺に向かって言った。

「………」

「…あなたは、いい人よ!…だって、私を…私を変えてくれた…自分を最低だなんて言わないで…」


【…千冬】

千冬は、涙を流した………俺の為の涙では、なく……陵と言う人間に対しての涙を……。


【…!!】

「…陵…君」
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