二人で一人〜永遠に
「……春の思い出か…」
ベランダから見える埠頭のランプを見ながら呟いた。
「琉汰?」
「あっ…兄貴」
「…思い出?」
「あぁ、千冬が言ってたんだ、大切な思い出があるって…」
「琉汰は、思い出せないのか?二人に関係がある思い出なんじゃないか?」
「…たぶん…」
その日、中々寝付けなく千冬が言っていた、思い出を考えたが、思いだせなかった。
「千冬」
「何?」
「今日は、陵君と病院行かなくていい日よね?」
「うん、そうだけど…どうして?」
「久しぶりに、お母さんと出掛けない?」
お母さんの声が、弾んでいるようだった。
「…いいの?私が、一緒で…」
「良いに決まってるでしょう!私の大事な娘なんだから!」
「お母さん…」
お母さんは、私を優しく抱きしめた。
「…じゃ、可能性が有るんだな!?」
俺は、兄貴の言葉を聞いて椅子から立ち上がった。
「あぁ!この前、検査でわかった…後は、提供者が現れれば…」
「…提供者…」
「琉汰…」